デンマークの学校 フォルケホイスコーレ生活
さて、ここでは、自分が2010年の1年間、大学を休学していた間に滞在して回った、
デンマークのフォルケホイスコーレについて書いておこうと思います。
それから、夏のあいだに滞在していたデンマークのエコビレッジについても少しふれます。
そもそも、「ホイスコーレってなんなんだ?」っていう疑問が浮かぶと思います。
よく聞かれまして、そして返答に困るのですが、自分自身の回答として、ひとことで言うと、
「生きること」を学ぶ学校
という感じです。
おお、なんかすごいな、という感じかとは思いますが、その特徴はおおきく2つあって、
ひとつは、試験が一切ないこと
もうひとつは、寄宿制で生徒はみんな学校に住むこと
です。
「試験が一切ない」のは、入学時から卒業時まで一切、試験を行いません。
だから入学条件は、入学試験を合格した者、ではなく、「17歳半以上であること」だけであり、
17歳半以上であれば、文化国籍問わず誰でも入学可です。日本人の自分でも。
そして試験を行わないため、その学びは日本の学校教育などと大きく異なります。
たとえば日本の学校教育の場合、結果的に試験がその勉強自体を決めていますよね。
もちろん試験というのは、学んだものがどの程度理解・定着できているかをはかるための一形式ですが、
しかし直近の目標として、「試験に合格する」という明確な目的が存在しています。
これに対して、試験が存在しなくなると、どうなるのでしょうか。
試験が存在しなくなると、勉強するための明確な目的が、形式上なくなります。
そうなると、じゃあ何で勉強するんだってことになって、それぞれが勉強する理由を問い、見つけ出します。
つまり、学びが能動的になります。
だって、やりたくなかったら勉強しなくていいんだもん。成績とかも出ないしね。
さらにこのホイスコーレ、卒業試験もなく、卒業証書らしきものは一応もらえますが、
持っているからといって学歴になるわけでもなく、持ってたら肩書きとしてどうなるといったことも特にありません。
なので、「学びたいから学びにくる」といった場所になっています。
これが一つ目。
もうひとつの「寄宿制で学校に住む」というのは、
いわゆる寮生活をイメージしてもらえばいいと思いますが、
生徒全員が、学校の中に住んでます。全員ではないですが先生も住んでます。
そして、朝起きてから食事、掃除、クラス、寝るまで、
基本的にみんなとずっと一緒にすごします。
これは、ホイスコーレの「学び」とは教室の中だけのものではなく、
むしろ日常生活の中、それから、生活を通した対話の中にあるものだ、という考え方にもとづいています。
ここに、「生きることを学ぶ」と述べた理由がみれると思います。
実際、いろいろな人と(国籍も文化も違う)あのようなインテンシブな環境の中、
およそ4〜5ヶ月間、共同生活を営む
というのは、そうとう面白いことでして、
のんびりとした時間の流れの中で、
めちゃめちゃみんなと向き合うし、めちゃめちゃ自分とも向き合います。
これが二つ目です。
まだまだ特徴はあるのですが、これが大まかな特徴となります。
デンマーク国内には、全部で現在およそ80校ありまして、
学校によって特色も本当にさまざまなので、やはり一言でくくるのは正直ちょっと難しいと思います!
自分は、そんな中から、1年間で合計3校、ふらふらとまわってきました。
※ホイスコーレ紹介ムービー
http://www.youtube.com/watch?v=2ow5Qcxwrwg
自分が最後に滞在していたKrogerupという学校が、外国人向けのムービーを作成しています(英語)。
※同じくKrogerupが作成したもので、ホイスコーレでの日常生活を紹介したものも作成されています(英語)。
http://www.youtube.com/watch?v=HD69sdBJwEU
まず2010年1月より、Askov Højskoleで、雪にまみれた頃より、5月末まで、
多くのデンマーク人とともに生活。デンマーク語とデンマーク文化を学ぶ。
※Askov Højskoleホームページ(デンマーク語・英語)
ここAskovは、デンマークにたくさんホイスコーレができてくる中の、ホイスコーレ運動と呼ばれる動きの
中核を担っていた学校で、最も歴史と伝統を持っている学校です。
だからこそ、絶対見に行きたいと思っていました。
ジャーナリズムを学ぶデンマーク人が多くいました。
5月末より、学校の修了に伴いDen Internationale Højskoleに移動。
こちらは、完全にインターナショナルな学校となっています。学校内の公用語ももちろん英語。
全世界30カ国以上から生徒が集まる環境の中に、
自分は極めてイレギュラーになんとか入学を許可してもらい、5週間滞在しました。
※Den Internationale Højskole(International People's College)ホームページ(英語)
ここでも、生徒たちこそインターナショナルでしたが、自分にとってかなりホイスコーレを見出せたなぁ
と思っています。
ぼくの滞在は5週間程度と比較的短かったので、ここで学んだことは、クラスを通しての学びというよりは
インターナショナルな環境の中で生きること、多様性に触れること、それからとにかく楽しむこと、でした。
たとえば、ぼくのルームメイトはパレスチナ人、となりの部屋にはグルジア人のアマチュアサッカー選手(イケメン)、
それから同じコリドーには、スイス、ノルウェー美人、リトアニア、アメリカ、中米からエクアドル、ベネズエラ、
ハンガリー、スロベニア、そしてデンマーク人、といった感じ。いろんな人と触れ合いました。
また、ここでは多くの日本人とも出会い、その出会いも大変貴重なものでした。
8月末からは、
Krogerup HøjskoleのCrossing Bordersというコースに所属。
けっこうきつきつなコースで4ヶ月間、いろんなとこに飛び回りながら、
MDGs、気候変動、メディア、紛争とか、そんな話ばかりしていたけど、
それでもまったりした、本当に自分の家で、自分の家族とすごすような、空間と時間。
これが、自分のしたかったデンマークのまなびだ、という日々をおくる。
※Crossing Bordersホームページ(英語)
http://www.crossingborder.org/
ちなみに、Crossing Bordersは日本でも活動していて、主に提携(非公認)教育機関・学校や
大学などでのレクチャー・ワークショップを行っています。
そしてなんと、日本語版のウェブサイトもあるのです!(できたてですが)
http://www.crossingborders.jp/
今年6月前後には今年も活動が行われる予定です。
ここでは、本当に
「対話の大切さ」
「多様性を受け入れること」
「人として生きること」
を強く、強く学んだと思っています。本当にみんな家族のようでした!
夏のあいだは、偶然知ったデンマークのエコビレッジSvanholmにたどり着き、
空気のおいしい田舎で、すばらしい仲間と共に、1ヶ月間まったり生活。
いわゆるファームステイのような形で、コミュニティの一員としてビルディンググループに
所属することになり、 現地に住む人たちと一緒に
ペンキ塗りまくって、ときどき農業して、仕事終わって昼からビール飲んで、
そんな生活でした。
※エコビレッジSvanholmとは?
Svanholmのウェブサイトに、ビジョンやコミュニティのしくみなどが詳しく載っています(英語)。↓
英語で読めるページだけでかなり詳しく書かれています。
興味がある方には、とーっても面白いと思います。
ぼくもこれを読んでいたら「もうここは行って、直接見るしかない!」ってなってしまいました。笑
メールで滞在のやり取りをしていたのですが、返信が遅く、忘れられたのかと思ったので、もういいやと思って
勝手に突撃して直接行ってしまったくらいです。
2010年12月末までKrogerupに滞在して、帰国しました。
そんなこんなな、デンマーク生活でした。
デンマーク滞在は、1年間「フォルケホイスコーレ」という、一本の明確な軸で通したつもりですが、
その間、ふれあった多くのデンマーク人から、デンマークの社会・文化・風土・かれらの価値観や生き方
いいことだけでなくよくない部分、具体的なものでは福祉・環境政策や労働環境、
学校を変えたり国内をふらつくことでみえてきた国の全体像
それから、何より自分がホイスコーレに入ることで本当に色々なものを、横断的に学ぶことができました。
もともと、これがデンマークに行くもうひとつのねらいでもあったので(世界一幸せな国とか言われてますし!笑)、
その点もよかったかなと思っています。
と、ながくなりましたが、こんなかんじです。
ふう。